『パコと魔法の絵本』

良くも悪くも、完全な舞台劇。大量のCGが無かったとしても、暗転や照明で十分再現可能だろうと思う。個人的には好きだけど、好みは分かれるかもしれない。
CGを多用し、人物・空間が限定された芝居という意味では、『チャーリーとチョコレート工場』のイメージに非常に近い。童話的な雰囲気や、子供に分かりやすい単純なボケ、大人にだけ通じるシュールさなんかも含めて、共通点は多い。「パコ」の方は「芝居」を入れ込む形だが、もしこれをハリウッドでやっていたら、確実に「歌」になっていただろうと思う。つまり、ミュージカル的な雰囲気がある。
今回はネタバレ無し。というか、ネタバレになる要素なんてほぼ皆無。ラストのワンシーン以外、予告編だけで全て語られている類の映画だった。TVの予告編見てラストシーンのネタバレだけ聞いたら、もう中身見る必要ないんじゃないだろうか。


全体的に、盛り上がりの波はそれほど大きくない。これもまた舞台っぽいんだけど、「幕」ごとにちょっとした山場を持ってきていて、その間でいくらかクールダウンするから、カタルシスが得られるようなものすごい積み上げは無い。
正直大貫が心を開く過程がやや唐突だったし、各人物の掘り下げも短時間の「説明」になりがちだったから、感情移入という点でもあまり深くはできない。
笑いも涙も結構中途半端で、すごく泣きたい、とにかく笑いたい、と思って見るとがっかりするかも。


ただ、役者陣の好演は見物。役所広司をはじめ、特殊メイクと大仰な芝居のせいもあってか、その役者の既存イメージとちょっと違う面が出ていた気がする。
そして何より、アヤカ・ウィルソンが可愛すぎる。エマ・ワトソンが可愛くなくなってしまった今、アヤカ・ウィルソンには期待せざるを得ない。この作品ではセリフもほとんど無かったけど、にこにこ笑ってるだけで絵になる子役なんて久しぶりだ。