増子二郎::ポストガール2

ポストガール (電撃文庫)ポストガール〈2〉 (電撃文庫)
古本のワゴンセールで表紙買いした作品。1巻を50円、2巻を150円で買った。
何とかって賞を取ったと書いてあったから期待したが、別に特別すごいところがあるわけではなかった。文体は素直だがややしつこくて、蛇足が多い。短編にありがちな冒頭の基本説明を一生懸命色んな表現に変えようとしてるのも、かえってうざったい。
内容的にも、和んだりやるせなくなったりはするが、あまり心に残らない。
まず、あまりに主人公のシルキー視点なせいで、手紙の送り先の人々に感情移入しづらい。じゃあシルキーの方には感情移入できるのかというと、それもそうならない。何故かというと、シルキーの設定と描写が噛み合ってないからだ。
そもそも、本来単なる自律思考型アンドロイドであるはずのシルキーが自我を芽生えさせていく、というのが本筋のはずなのに、その表現があまりに杜撰なのがきつい。シルキー自身が、自身の人間性を「バグ」と呼び本来存在しないもの、自分の中で増大して行くものとして認識しているのに、一方でモノローグは場面問わず常に人間的に表現される。要するに、機械的なものと人間的なものを書き分けることができていない。これは設定が設定なだけに致命的とも言える問題だと思う。
つまらないというわけではないんだけど、非常に薄味で、読後30分も経てばすっかり記憶から消えてしまいそうな作品。