デジタルアライアンスの損害賠償についての判例

判例長いっす。
要するに読売の主張は、デジタルアライアンスの行為が以下の三つに該当するというもの。

  1. 著作権侵害
  2. 不正競争防止法違反
  3. 不法行為

著作権侵害

見出しは著作物にならない、と一般論で片付けるのではなくて、無断利用された見出し一つ一つにいちいち検討を加え、創作性を判断しています。裁判官が、掛け言葉とかに評価を加えてるのはなんか面白いですね。
この事案では結局、一つも創作性の認められる見出しは無いと判断されたんですが、じゃあどんなのが創作性あるって言えるんだよ、というと、さっぱり分かりません。具体的に検討して創作性があれば著作権を認めると言ったって、事実上無理なんじゃないですかねぇ。結構評価も辛口ですし。

不正競争防止法違反

「商品の形態」を模倣したのが不正競争防止法2条1項3号違反だ、という主張らしいです。
で、判決としては、「商品の形態」というのは形あるものについて言っているのであって、見出しはこれに含まない、てな感じ。まぁそうでしょうな。

不法行為

民法改正で明文化された、「権利以外でも法的保護に値する利益を侵害したら不法行為になる」って理論です。

(2) 不法行為民法709条)が成立するためには,必ずしも著作権など法律に定められた厳密な意味での権利が侵害された場合に限らず,法的保護に値する利益が違法に侵害がされた場合であれば不法行為が成立するものと解すべきである。

それと、損害の認定。見出しを無断利用されたからって特にYOLの閲覧者が減るといったような積極的損害は無いけど、契約して配信してた場合なら得られたであろう利益を逸失利益として認定しています。

(3) 損害についてみるに,控訴人が被控訴人に対し請求し得る損害は,被控訴人が無断でYOL見出しを使用したことによって控訴人に生じた損害である。
被控訴人がライントピックスサービスを一定期間行っていたからといって,その分,控訴人のYOL見出しにアクセスする数が現実に減少したなどの事情が証拠上認めることができないのであるから,この視点からは,控訴人には実損害が生じているわけではないともいえなくもない。しかしながら,そうであるからといって,他人の形成した情報について,契約締結をして約定の使用料を支払ってこれを営業に使用する者があるのを後目に,契約締結をしないでそれゆえ無償でこれを自己の営業に使用する者を,当該他人に実損害が生じていないものとして,何らの費用負担なくして容認することは,侵害行為を助長する結果になり,社会的な相当性を欠くといわざるを得ない。そうすると,結局のところ,被控訴人が行った侵害行為による控訴人の損害及び損害額については,控訴人と被控訴人が契約締結したならば合意したであろう適正な使用料に相当する金額を控訴人の逸失利益として認定するのが相当である。

個人的感想

さて、今回読売は逆転大勝利というような感じで報道されてましたけど、結論の部分を読むとそうでもない気がしてきます。なぜなら、メインである著作権の主張は全面的に退けられ、賠償額はたったの23万7741円。おまけに訴訟提起手数料は99.95%が読売持ちという結果だからです。
デジタルアライアンスの不法性を明らかにしてちゃんと金を払わせたという意味合いはあるのかもしれませんが、デジタルアライアンスの方も実はある程度の金を払うつもりがあったみたいですし、読売が望んでた「勝利」には程遠いんじゃないかなと。
やっぱりIT関連は難しいですねぇ。

5 結論
以上によれば,控訴人の請求は,不法行為に基づく損害賠償として23万7741円の限度で理由があり,その余の請求は理由がないので,原判決を上記請求認容の限度で変更し,当審で追加された請求は棄却することとする。
訴訟費用の負担については,本訴の訴額が差止請求部分と損害賠償請求部分を合算すると,4億円を超えるものであるのに,認容額は損害賠償のごく一部にすぎず,しかも,本訴における主張立証の大半は,著作権に基づく請求について行われ,この点について控訴人は敗訴しているほか,被控訴人は遠隔地からの応訴であること,控訴人が適切な事前交渉の措置を講じなかったこと,和解勧試における状況によれば,被控訴人は相当額の金銭の支払いを検討する用意があるとの意向を示唆していたことなどを考慮すると,訴訟費用の負担のうち,訴えの提起及び控訴の提起の申立て手数料の1万分の5を被控訴人の負担とし,その余の訴訟費用をすべて控訴人の負担とするのが相当である。

てか、見やすくするためなのか知りませんけど、判決文に全角英数字使うのは勘弁して欲しいです。おかしいでしょ、どう考えたって。