「分からない」事は理解しにくい

たとえば、書店に行けばインターネットやHTML/CSSなどの解説書、エクセル、ワードなどの入門書がたくさん並んでいる。しかし、それらは本当に買う価値のあるものか、というと微妙なもので、HTMLやらCSSなんて、ネットで調べて実際に自分で弄った方が遥かに早く修得できそうだ。エクセル・ワードも然り。「そんなこと、やってみれば分かるだろ」というような内容しか無い本は多い。
ところが、それは多少なりとも分かる人間だからそう言えるのであって、そんな事をいくら言ったって出来ない人には全く出来ない。ついでに言えば、いくらネットが便利と言ったって、やっぱり紙媒体じゃないと無理という人もいるし、内容によっては万人にとって紙媒体の方が優れていることも多い。


パソコン・ネットに関する事を人に教える場合は、まず相手がどこまで分かるのか理解する必要がある。と言っても、「教えてくれ」と言える人間は大抵ほとんど全然分からない場合が多い。初心者から初級者に上がれば、それだけで「自分で調べる」ようになっているはずだからだ。だから、教える方もそのつもりで教えた方がいい。
まず、自分ではどんなに簡単な言葉だと思っている単語でも、できるだけ使わない。「ブラウザ」と言っても何のことか分からない人は結構多かったりする。「スパムメール」なんて言っても分からないから、「迷惑メール」と言ってあげよう。そして、厳密な意味の違いは無視して、大体の雰囲気が伝わるような説明にしておく。「ブログって何?」と聞かれたら「日記と掲示板を合わせたようなもので、今流行ってる」とでも言っておこう。コメントだのトラバだの言ったってうざいだけだ。
その上で、実際の作業についてはしつこいくらい細かく指示する。「外に出る」を、「この部屋を出て廊下を進み、玄関で靴を履いたらドアを開けて外に出る」と言うくらいのつもりで説明した方がいい。


そんなのは情報処理教育が始まる前の世代だけだろう、と思うかもしれないが、意外と若い人でもそういうのは多い。田舎では、インターネットをしたことがない若者もたくさんいる。というか、そういう家ではパソコン自体が無い場合が多い。まだまだそんなレベルだ。
だからこそ、サポートは商売になる。仮に機能が同程度のフリーソフトがあっても、補償とサポートの付いた製品ソフトが売れる。バグがどうのと言われても、一番トラブルを解決しやすい高シェア会社の製品を選ぶ。それは合理的で、正しいことだ。トータルコストとしては安く上がっているのだから。


しかしやはり、分かってはいてもついつい自分を基準に相手を見てしまう。「何でそんな事も分からないの!?」と思ってしまう。
まずは、相手が全くと言っていいほど「分かってない」という事を分からないと、始まらない。