筒井康隆::時をかける少女(新装版)

時をかける少女 〈新装版〉 (角川文庫)

時をかける少女 〈新装版〉 (角川文庫)

古い!地の文も会話文も、とにかく言葉遣いが古い。さすが昭和51年の作品。同級生に「まあ、まちたまえ」ってw
時代背景というか、登場人物の思考も古い。超能力に関する説明や考察も古くて、今見るとどうしても笑ってしまう。未来に対する考え方なんかも、いかにも昭和的。平成に生きる人間からすればおいおいwと一笑に付すような未来観だ。アニメ映画版の未来像とは対照的すぎて、そこが印象的だったか。一応千昭の未来は一夫の未来よりずっと先ってことになってるんだろうけど。
アニメ映画版と言えば、映画に出てくる伯母さんの話だって聞いてたけど、この小説を読む限り完全なパラレルというか、実質的な繋がりは皆無であるとしか思えない。この小説の後日談が映画版だというなら、伯母さんはタイムリープに関する記憶は失ってるはずだし、覚えていたとしても「その年頃の女の子にはよくある」なんて説明するはずないし*1。それに千昭は記憶を消す装置か何かを持ってきてないとおかしい。
まぁ正直言って、このオリジナルの小説自体にはあまり魅力を感じなかった。感覚が古すぎるというのもあるけど、短すぎて登場人物の内面が浅いというのが大きい。主人公がどういう人間なのかいまいち掴みづらかった。
そして何より、設定考証が甘い。ただ甘いだけなら別にどうこう言わないが、キーワードである「ラベンダー」について決定的におかしい記述をしてるのがどうにも頂けない。「身体移動刺激薬にラベンダーを混ぜるとタイムリープも可能な薬になる」と説明しておきながら、「ラベンダーから身体移動刺激薬を作るために云々」という話が出てくる。それ、結局原材料ラベンダーだけじゃねぇか。
というわけで、王道としての基盤を築いた点は評価できるけど、オリジナル単体として今読んで面白いかと言われればそれほどでもないというのが結論。

*1:近くに未来人がいることに気付いてて敢えて黙ってたんなら性格悪い。