乙一::The Book jojo's bizarre adventure 4th another day

The Book 〜jojo's bizarre adventure 4th another day〜

The Book 〜jojo's bizarre adventure 4th another day〜

5年もかけて乙一が書き上げたジョジョ。面白かった。
以下、ややネタバレ。
内容的には、ジョジョの世界設定を借りた乙一。特にジョジョである必要性はなくて、いかにも乙一らしいストーリーだった。もっとも、ジョジョらしくないというわけでもない。元々乙一の小説には特殊な能力や現象が多いから、スタンドという設定と親和的なのかもしれない。
複数人の視点と別々の時間軸を織り交ぜて、最終的に読者の中で一つのストーリーが完成するという文体で、ミステリー的な要素は無い。主人公というか、中心になる人物も、杖助達ではなくオリジナルキャラの方。しかも杖助達に追われる側。ジョジョはいつも絵に描いたような悪役をぶちのめす感じだけど、この本ではそうでもなくて、むしろ杖助達の方が悪く見えさえした。
最終的な読後感としては、とにかくもの悲しい。乙一は女を酷い目に遭わせるのが大好きなドSなんじゃないかと思ってしまう。乙一の描く女性は極めて魅力的なもんだから、悲壮感が一層強くなる。残酷なはずなのにどこか綺麗に感じてしまうのが、乙一の文章のうまさだ。
読み終えて残ったイメージは、杖助でも康一君でも、主人公の少年でもない。ただ一人、泥の中で子を想いながら死んだ女性の姿。それを思い返すたび涙が出そうになる。
そんな悲しい話。


ただ、ちょっと微妙だったのは、作中で「コミックス参照」とか「漫画では」とか、突然乙一視点が入り込んでたこと。これは良くない。ジョジョが好きなのは分かるが、とりあえずそういうことはあとがきで書いて、小説を読んでいる間くらいは作中に没頭させて欲しかった。
もう一つ、どうしても納得のいかない展開ミスもある。これを言うとかなりネタバレなんだが、バトルシーンのラスト、【The Book】をめくる時、なぜわざわざ過去の自殺のページまで戻ろうとしたのか。ほんの数分前に杖助に殴られたのだから、そのページを見せれば速かったのじゃないだろうか。杖助の方は既に飛び下りのダメージを負ってるから、クレイジーダイヤモンドの打撃でも十分倒せた気がする。乙一の頭が回ってなかったのか、戦闘中にそこまで考えられないと解釈するか、むしろ負けることを望んでいたと解釈するか…。