『アイ・アム・レジェンド』

全世界でバイオハザード。SFとしてはありがちな内容ではあるけど、リメイク作品だからしょうがない。それはそれとして面白かった。
以下、ストーリーと感想。レベルを分けてネタバレもする。

ネタバレ度:小(予告編レベル)

2009年に、治療薬として遺伝子改造されたウイルスが治療不可能な凶悪ウイルスとなって全世界に蔓延し、人類はほぼ絶滅状態に陥る。致死率は90%以上。生き残ったとしても、凶暴化して太陽の光を浴びると死ぬ身体になってしまう。1%以下の確率で「免疫」を生じる人間もいたが、彼らも凶暴化した「感染者」によって食い殺されほとんど死亡。
主人公のロバート・ネビルはウイルス学者だったが、「免疫者」としてニューヨークで唯一の生存者となる。彼はラジオ放送で生存者に呼びかけつつ、愛犬サムと共にニューヨークで暮らし続け、なんとか治療薬を開発しようと一人で研究を続けていた。日没後に街を徘徊する「感染者」達から身を隠しながら。
CGをうまく使ったんだろうけど、廃墟になったニューヨークは壮観だった。「ニューヨークに一人だけ」というと自由気ままな感じがするが、実際には「感染者」に襲われる危険があるので、移動や建物への侵入、日没の時間などに恐ろしいほどの注意を払っている。その中で、レンタルDVDショップに通ってマネキンに話しかけたりする描写から、「感染者」の恐怖とネビルの孤独が見えてくる。

ネタバレ度:中(結末までは行かない)

ネビルは、動物実験の後で人間の「感染者」を捕獲し、血清の人体実験を繰り返している。捕獲は命懸けだが、それ以上にネビルを恐怖させたのは、「感染者」に復讐感情や仲間意識が垣間見えるようになってきたこと。ネビルは敢えてその事実から目を背けていたが、ついに、ある「感染者」がネビルの利用していた罠を真似して使ってきた。
ネビルは「感染者」の罠にかかって危うく殺されかけるが、この時愛犬サムが犬の「感染者」に傷を負わされ、サムまでもが感染してしまう(ネビルは完全な免疫を持つが、犬は空気感染にしか耐性が無い)。やむを得ず、ネビルは自ら「発症」し始めたサムを殺す。
序盤でサムの可愛らしさとネビルにとっての重要さをアピールしていたので、このシーンは相当きつい。物語の設定からして、「犬が死ぬ」というのは絶対発生するイベントだと予想がつくわけだが、それが逆に「いつ死ぬんだ」と恐怖させる要素だった。犬好きなら、ここまででサスペンスホラーとして一つの区切りがついたと感じるはずだ。
翌日の夜、いつもなら隠れ家に籠もっているはずのネビルが、埠頭で「感染者」達と戦う。一掃する作戦があったわけではなく、情に駆られた行動。当然「感染者」の集団に殺されそうになる。しかしその時、助けが入る。ネビルの放送を聞いて別の土地からやってきた女性アナとその幼い息子イーサン。彼女らはネビルと同じく「免疫者」だった。
ここでネビルは久しぶりに「人間」と触れ合うわけだが、ここまででようやく「何故こうなったのか?」の説明が終わる。現在の描写にネビルの回想が挟まりながら進む構成は、単にネビルがモノローグで経緯を説明するより緊張感があると思った。

ネタバレ度:大(結末も含む)

ともかく助かったネビル達だったが、夜明け前に隠れ家に帰ってしまったため、「感染者」達に場所がばれ、大がかりな襲撃を受ける。地下の研究室に避難するネビル達。「感染者」達が今にも壁を破ろうとしている中、人体実験中だった「血清」に効果が顕れていることに気付く。ネビルは、アナに血清サンプルを託し、二人を隠して「感染者」達と共に自爆する。
その後、アナとイーサンは血清を持って「生存者の村」へと辿り着く。自らの命を懸けて治療薬を開発したネビルは、「伝説」となった。


結末はハッピーともアンハッピーとも言えないが、とりあえず人類は再興するらしい。
序盤から「感染者」の恐怖は描写され、前半の「犬がいつ死んでしまうか」という恐怖と、後半のパニックホラー的恐怖が最大の注目点になる。この辺のハラハラドキドキはすごい。何度も繰り返すけど、犬の死はターニングポイントであり最大の見所だと思う。
ところで、やや戻って、アナ達が何故夜中の埠頭にいたのかだが、実はこれ、ネビルが罠にかかって日没頃まで気を失っていたというのと絡んでる。本来ならネビルは毎日真昼に埠頭で人を待っているんだが、罠にかかったせいでその日は行けなかった。罠についても、マネキンを囮にした単純なもので、冷静に考えれば「感染者」の仕業だと気付き警戒できたはず。「感染者」の学習能力から目を逸らさず、パニックにならなければ、犬もネビルも生きたままアナとイーサンに出会い、人類を再興できたかもしれない。そう思うと何か悲しい。

アイ・アム・レジェンド (ハヤカワ文庫NV)

アイ・アム・レジェンド (ハヤカワ文庫NV)


原作の「地球最後の男」が、DVDなのに780円と激安で笑った。

地球最後の男 [DVD]

地球最後の男 [DVD]