紅 #12「われ存在り」[最終回]

見事な終わり方だった。1クール完結としては過去最高。
真九郎の「角」が異形という以外全くの役立たずで終わったのは残念だけど、まぁあれは真九郎の後悔の象徴であり未熟さの表れだから、あんなもんでいいのかな。
紫の真九郎に対する感情をあくまでボディガード以上恋愛未満にとどめたのも絶妙な距離感。紫が九鳳院に残って旧き悪しき因習と闘うというのであれば、真九郎とは離れすぎても近すぎてもいけない。紫にとっての「外」が現状真九郎の存在のみによって支えられてる以上、真九郎の存在は紫のこれからの原動力になるわけだけど、かといって真九郎に対してはっきりした恋愛感情を抱いてしまうと、「恋をしたい」という目標も達成されちゃうし、下手すると真九郎の傍にいることを優先してしまう可能性がある。今の気持ちがはっきりしていないからこそ、「いつか」に対する決意が強くなる。紫の決断は、真九郎との関係がまだ曖昧だったからこそ為されたと言えるし、最後の手紙調のモノローグにもそれが表れている。


政略結婚させられた正妻の方も、妻という形式的な存在意義しか持たず、身代わり人形として九鳳院に押し込められてるわけだから、これはこれで非常に屈辱的。彼女もまた九鳳院の犠牲となった女性であって、最初から彼女が根っからの悪人に見えないようになっていたのは、演出・脚本の妙だろう。蓮丈は彼女を愛そうとしていた節があるので、全てがうまく回れば彼女もいずれ救われるのかもしれない。まずは紫が彼女を「お母様」と呼ぶところが出発点だろうな。


プレスコの弊害としてバトルシーンはスピード感や迫力に欠けていたけど、それを補って余りある会話演技。松尾監督には、今度はバトルの無い作品でプレスコをやってもらいたい。