乙一::GOTH

GOTH―リストカット事件

GOTH―リストカット事件

いやー、黒かった。乙一作品の登場人物は、基本的に何か大切な部分が欠落してしまっている人間が多いです。ぽっかり穴が空いているというか。その穴を少しずつ埋めていくのが白乙一。穴をぐりぐりひねくり回したり、広げたりするのが黒乙一って感じがします。『GOTH』は、後者ですね。
ただ、実は『GOTH』も、読んでいるとどことなくせつなさがあったりするんですよね。一見ただひたすら黒いんですが、どことなく。キャラを濃くするために書いたという森野のエピソードと、最後の話を繋げてみると、そんな感じがしてきます。
『GOTH』も含めて、乙一作品に出てくる黒い人々、すなわち「異常犯罪者」は、極めて「普通」に黒い行動をとります。それが怖いところで、実際の異常者もそんな感じなのかもしれません。ただ、『GOTH』の主人公も、そういう黒い人です。ヒーロー的なところは一切無く、とにかく闇の深い人間。だから、作品を読んでいても何だか冷や冷やします。主人公がいつ異常犯罪者側になってもおかしくないような雰囲気があって、妙な緊張感があります。結局彼がそうならない(なったとも言えるけど)のは、彼が強い人間だからな気がします。闇を忍ばせ、闇を好むけど、闇に食われない。そんな感じ。ある意味で、一番怖いキャラでした。


あー、黒かった。