『包帯クラブ』

超駄作。
ツッコミどころが多すぎて笑うしかなくなる。泣くところ一つも無し。
以下、ネタバレ込みの全ストーリー。


冒頭でいきなり中二病ポエムを吐くワラ(石原さとみ)は、病院の屋上でエセ関西弁を操る男ディノ(柳楽優弥)に出会う。鬱っぽいワラに対して、ディノは「手当てや」と言って手すりに包帯を巻く。
その後、友人のタンシオ(貫地谷しほり)の失恋話がうっとおしくなったワラは、ディノの真似をしてタンシオが失恋した公園のブランコに包帯を巻いて見せる。それに謎の感動を覚えたタンシオは、ネット友達の浪人生ギモ(田中圭)と共にワラやディノを巻き込んで「包帯クラブ」を結成する。
包帯クラブは、サイト上で人の心の傷を募集し、その傷に関する場所に包帯を巻いて撮影し、アップロードするというクラブ。包帯が巻き付いている写真を見て何故心の傷が癒されるのか、どこに魅力があるのかは全く理解できないし、理解させようという意欲も感じられないが、とにかく依頼した人々が包帯クラブの活動によって立ち直っていく姿が説得力皆無な描写で描かれていく。
しかし、クラブの活動が軌道に乗った頃、ワラとタンシオは学校で先生に呼び出され、「街で包帯を巻いているのはお前らだろう」と詰問される。その場は逃れたものの、巻いた包帯を全て放置して逃げていたため、警察まで出てきて活動が頓挫する。写真撮ったら回収していたんだろうという視聴者の予想を完全に裏切り、もはや誰がどう見ても悪質な悪戯をしてるだけになってしまった包帯クラブ。管理者に許可を取り、撮影後に包帯を回収すればいいだけなのだが、極めて頭の悪いワラ達は気付かない。ディノはいち早くこれを見限り、脱退宣言をする。ディノも何か心の傷を抱えていると直感したワラだったが、ディノは打ち明けようとしない。
結局活動を停止することになった矢先、事件が起こる。ワラ達の旧友でお金持ちのテンポが、身辺を整理して消えたという報せが入ったのだ。受験勉強でイライラし、一方的な思い込みを正論と信じて偉そうに毒を吐くテンポは、実は以前にも同様にして投身自殺を図った経緯がある。ワラ達が心配する中、テンポから一通のメールが入る。

「学校と警察にチクり、自演までしてサイトの掲示板荒らしたのは私です。理由はあなた達の楽しそうな顔がムカついたからです。謝るつもりは無いけど邪魔したのが私だということは伝えておきます。さようなら」

これに危険を感じたワラ達は、テンポの自殺を思い止まらせるために包帯クラブの活動を再開する。活動停止の責任を感じさせないためだ。再び街を汚し始めたワラ達は、警察に追われながらも包帯をばらまいていく。それを見ても気の変わらないテンポは、いよいよ自殺しようと高層ビルの屋上へと赴く。
しかし、ワラのために再び現れたディノが、同じビルのヘリポートから大量の包帯を垂らしていたため、ビルの周りに人と警察が集まり、テンポも自殺を中止する。ディノは警察に逮捕されたが、テンポはワラ達と仲直りする。
その夜。たかだか子供の悪戯なのでどうこうなるはずはないのだが、父親の権力で警察に圧力をかけ釈放されたと電話で語るディノ。そんなディノのところへ駆けつけるワラ。ディノは自分の心の傷を語り始める。
一年前、ディノには二人の友人がいた。一人は関西弁で何にでもチャチャを入れるツッコミ、もう一人はデブで漫画家志望のマイウー。ある日、ツッコミの家で漫画を作ろうと集まる約束をした三人だったが、ディノは行くことができなかった。しかし、実はその日マイウーがツッコミを刺すという事件が起きていた。マイウーは更生施設へ送られ、ツッコミは下半身不随に陥る。ところがディノは、受験勉強に励んで二人のことは忘れるという友情の欠片も感じられない行動をとってしまう。
高校生活が落ち着いた頃、ディノは思う。「マイウーにデブとかオタクとか言っていたのは自分だ。マイウーは本当は自分を刺したかったのではないか?ツッコミはその身代わりとなったのではないか?」と。そこでマイウーに手紙をしたため、その疑問をぶつけてみた。マイウーからの返信をワラに渡し、ディノはそれをそらで読み上げる。

イライラしてやった。理由は特に無いが、相手は誰でも良かった。今は後悔している。君がいたら君を刺していたと思うので確かに身代わりと言えば身代わりだね。もう連絡すんな」

凶悪殺人を犯した精神病の少年のような文面に対し、ディノは友達のイライラに気づけなかったと後悔していたのだと言う。そして、別にマイウーのこととは全く関係無い気がするが、下半身不随になったツッコミにも怖くて会いに行けなかったと。
ぶっちゃけディノが傷つくような事件ではなく、むしろ傷ついたのは親友に刺されもう一人の親友は見舞いにも来てくれないというツッコミの方だったわけだが、ディノとワラは涙を流す。散々重い傷を示唆しておきながらネットで依頼してきた人達に比べあまりにも薄っぺらなディノを、ワラは後押しする。橋向こうのツッコミの家へ二人三脚で渡って行ったのだ。
苦しいリハビリに耐えながら頑張っていたツッコミは、一年間も会いに来なかった薄情なディノを暖かく迎える。ツッコミはいい奴だったのだ。


心の傷を癒す包帯クラブは、やがて世界へと広がる。今日も、彼らはどこかで街を汚しているのだ。