『涙そうそう』

録ったまま放置してたのを見た。
とりあえず流れがあまりにも分かりやすくて笑えた。船越英一郎が登場した瞬間に「あ、詐欺られる」と分かってしまうし、開店祝いの席で「この美貌と体力」と言った時点で病死エンドが見え見えになる。もう何もかもが簡単に予想のつくことばかりで、水戸黄門見てるみたいだった。
あとそれ以上に、何というか、設定と展開が全く噛み合ってない。
最初、義理の兄妹という関係性の中で揺れる悲恋なのかと思ったんだが、実際見てみると「義理の兄妹」である必然性が全く無い話だった。単純に兄妹愛をプッシュしてるだけだから、実の兄妹とかでも問題無い。というか、むしろ「義理の」と付くことによって全体に違和感を出してしまっている。
兄弟愛を描くつもりなら、はっきり言って恋愛感情を匂わせる部分は蛇足だし、逆に義理の兄妹における恋愛感情を描くつもりならもっとちゃんと葛藤を描くべきだ。何しろ、この兄妹は血縁どころか法律的な家族関係も皆無なわけで、「兄妹として育った」という倫理的な抵抗以外に障害は何一つ無い。それを兄妹が理解してるのかしてないのか、それすらよく分からないままだから、どうにも二人の感情が理解しがたい。というか、妹の方が義理の兄妹であるという事実を知っているとか知らないとかも途中まではっきり視聴者に伝えていないのはどうかと思った。
で、そんな中途半端な描写のままあっけなく兄は死亡。何も良いことのない人生だったという点で同情することはできるんだが、前半で既に死亡フラグを立ててたせいで特に衝撃も無く、脚本の意図が見え見えだからぽっくり死ぬことも分かり切っていた。これが、寝たきりになって妹が看病に疲れるとかなら面白そうだが、さっさと死んで軽いお涙だけ頂戴しようという安易な展開をそのまま出してきたので、もう笑うしかなかった。
いやはや、何とも陳腐な映画だった。