『スカイ・クロラ』

前評判が悪いので覚悟して観に行ったけど、それほど悪くはなかった。
主役二人の声優が吐き気を催すほど酷いのと、本編だけだと世界観が全然分からないのと、いくつかの謎が放り投げられてるのを除けば、あとは普通。
とりあえず、期待しなければ「ああ、押井だな」で終わる。少なくとも、監督生命を懸けられる作品ではないと思うが。


世界観が分からないと言うのは、作中での説明が乏しいというのもあるんだが、何より前宣伝と食い違っているのが大きい。「永遠に生きる少年」「ショーとしての戦争」という世界観は、物語終盤まで出てこないどころか、終盤になってようやく、これが完全なネタバレであり同時にミスリードであるということが分かる。この前宣伝を念頭に置いてみると、酷く混乱する。
また、「キルドレ=永遠に生きる少年」と謳っているにも関わらず、登場するキルドレ達はどう考えても10代終わりから20代前半。若いのは若いが、思春期というには歳をとりすぎている。なので戦闘機乗りであることの異常さも見えないし、はっきり言ってその意味でこの映画で語るべきテーマの一つは完全に死んでいる。


ティーチャー」については、もう完全に放り投げている。映画館を出た後書店で原作をパラパラめくってみたが、この「ティーチャー」は原作ではさほど重要な存在ではないらしい。映画で何故この「ティーチャー」を強調したのか、それは最後までよく分からなかった。「壁」としての高さを象徴していたのか、何か核心に近い存在として設定していたのか。
ちなみに、ラストシーンにおける主人公のセリフは、字幕だと「ティーチャーを撃墜する」だったが、実際には「I kill my father」に聞こえる。その意味は不明。


何だかんだで、地上波アニメを片っ端から見てるような人間からすれば、別に許せないほど酷いアニメではなかった。どうせ1000円の日にしか映画は観ないし。
ただし、耐え難いのは声優の下手さ。主人公とヒロインが二人きりで会話するシーンは、もう本当に耳を塞ぎたくなるほど。話題作りのために端役で素人声優を使うのは許せるが、主役にこんな大根を使うのはいい加減やめて欲しい。