『ボルト』[3D吹替]

オーソドックスなハートフル作品で、全体によくできていた。
若干ドラマが薄いというか、インパクトに欠ける脚本だとは感じたけど、全年齢向けとしてはその方がいいのかもしれない。そしてそうは言っても、ボルト、ミトンズ、ライノのキャラクターがうまく絡んでいて、きっちり心に響くものを作り上げている。
一方CGの出来に関しては、流石としか言い様のない出来。毛の質感や犬の動作、アクションシーンの慣性など、細部に至るまで見事な出来映えだった。
3Dのために吹替で見たわけだが、声優に関してはかなりうまい方だろう。ボルト役の佐々木蔵之介、ライノ役の天野ひろゆきもかなり頑張った方だと思うが、特に印象的なのはミトンズ役の江角マキコ蟲師でぬい役を演じたときにもうまいと思ったが、今回も名演と言っていい。これだけのレベルなら、情報量の少ない字幕版よりも吹替版で見た方が楽しめるかもしれない。


ただ、3Dの方はちょっと残念な感じだった。
3Dというのは常にピント調整が必要なわけだから、その分目が疲れる。だからそれを上回るだけのメリットを期待して2000円払っているんだが、『ボルト』にはそれが無かった。
確かに、全編にわたって奥行きや立体感が感じられる。だが、それだけだと単にスクリーン上に凹凸があるという程度で、3D特有の「浮遊感」が得られない。以前TDSで見た3Dショーに比べると、月とスッポンとさえ言える。
そもそも、3Dの場合フレームアウトしてしまうとその時点で平面に戻ってしまう。また、動きが速すぎるとそれも「立体」としては目で追えなくなる。従って、3Dをフルに活かすのであれば、フレームに全部収まる絵が、ある程度ゆっくりこちら側に迫る(もしくは動かない)というシーンが必要だ。ボルトにはこれがほとんど無く、3Dとしては本編前のCMの方が遙かに出来がいい。
3Dで見ることを前提としているようなシーン(コインがゆっくり転がるシーンなど)もあるにはあるが、やはり「3Dでも見られる」という程度で、3Dをフルに活かそうという姿勢は見られない。どうも、3Dを楽しみたいならディズニーリゾートの専用アトラクションに行くべきなようだ。