『サマーウォーズ』

デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム』の完全な焼き直しと言われている本作だが、自分は「ウォーゲーム」の方を見てないので関係なかった。
[以下ネタバレ含む]


とにかく見せ場の作り方がうまいというか、登場する主要キャラに1つずつ「得意分野での活躍」シーンを与え、現実世界での出来事とうまくリンクさせつつ感動を誘うようになっている。中盤からは「見せ場」の連続で、少年誌的な逆転劇が楽しめる。
中盤までは陣内家という旧家における現実世界の家族描写が中心になるが、この陣内家の様相がまた「あるある」と「ないない」のギリギリのラインで、何となくこの家族描写自体が現実と虚構の間を隠喩しているように見える。
ところで、最近アニメを見ているとついつい思ってしまうのが、「外国人に理解できるのか?」ということなんだが、夏希の「見せ場」である花札勝負に至っては、日本人でも理解できる人は少ないんじゃないかと思う。圧倒的なアカウント差をひっくり返せて、かつAIに勝てるような運の要素が入るゲームという点では、「こいこい」は最適なわけだが、劇中でのあの描写でそこまで分かれというのは酷だ。もっとも、敬が序盤で「まだルールが…」と言っていることからすると、むしろそれを狙ったのかもしれない。「分からない」からこそ、ノリだけで盛り上がれるのかもしれない。


内容的には非常に面白かったが、正直舞台設定であるネット世界に関しては、あんまり考えてないように思えた。
冒頭に重要設定である仮想空間「OZ」の説明が為されているが、この「OZ」の位置づけが意味不明すぎる。世界中で利用され、日本に至っては行政を含めたあらゆる公的権限まで「OZ」に頼っているというのは、もはや一企業ではあり得ない。それどころか電話やメールまで「OZ」経由になっているというのだから、インフラの統一が進みすぎていて逆に国営ではあり得ない。「現実に影響しうる虚構」を用意しようとしたのは分かるが、ここまで虚構性が高いと、かえって現実と虚構という対比自体を崩しかねない。
ラストの人工衛星落下地点をずらすという話も、普通に考えれば市街地に落としてしまう可能性が高いわけで、「えー…?」という感じだ。ゲーム世界で挌闘して勝ったらアカウント奪えるというのも、いつの間にかそういう設定になっていて、納得しがたい。
多分これらは、デジモンの話をそのまま焼き直したツケが回ってきてるんだろう。デジタルワールドという設定のあるデジモンなら許されるが、リアル世界と単なるネット上の仮想空間という舞台に置き換えたのであれば、もうちょっと工夫が欲しかった。


最後に、声優に関してはかなり残念な感じだった。
日本のアニメ長編映画では何故かこのレベルでも許される傾向にあるが、もうちょっと何とかならなかったのかと思う。