『カールじいさんの空飛ぶ家』[3D吹替]

最寄りの映画館が3D版の価格を改定し、+300円(1000円の日なら1300円)で見られるようになったので3Dで見てきた。方式はRealDだが、他の方式で見たことがないのでネットで見かけた「方式にも拘って」云々は分からない。
3Dについてだけ言うと、動きが少なく奥行きのある映像だったので、前に3Dで見た『ボルト』に比べると3Dで見る価値はかなり大きいと思う。それでも「立体感がある」という程度なので、グラスを付けて画面を暗くしてまで見る価値があるかどうかは、人によるかもしれない。
[以下ネタバレ含む]


物語は、笑いを交えながら涙とサスペンスを巧みに紡いでいて、全体を通して飽きさせない。
冒頭の無声パートは、『つみきのいえ』に近く、年齢が高いほどしんみり来る。「風船で家を飛ばす」というぶっ飛んだ基本設定があるので、諸々の御都合主義も全く気にならない。
「大人も子供も楽しめる」の代表格と言っていいぐらい、シンプルで分かり易いながらもしっかりと骨を持った作品だった。
ところで、主人公カールの妻エリーの少女時代、吹替だと声優が松元環季だった。天子の頃と比べると大分上達したわ。


ただ、正直ラストについては若干後味が悪い。
正確にはラストシーンではなくその前だが、カールは世間を見返そうとして異常な執念に燃えた冒険家を殺してしまう。もちろんはっきり死んだという描写があるわけではないし、あのフェードアウトならもしかして…という感じは残している。が、逆に生存描写もなく、子供でも死んだと判断するだろうと思うような描き方だ。
更に、カールは元の街に帰るため、この冒険家が移動と生活に使用していた飛行船に乗って行ってしまう。仕方のないこととは言え、夢を実現させるための最後の大冒険が、強盗殺人で締めくくられているわけで、どうにも気持ちが良くなかった。
この冒険家が本当に妄執に取り憑かれておかしくなった人間だったならまだしも、最初は普通に歓迎してくれていたのであって、誤解の種を蒔き育てたのは他ならぬカール自身だ。
そもそも、怪鳥を巡る冒険家とカール達の対立はお互いの心情に基づくものだが、これで冒険家の方が悪者扱いされるのは不憫でならない。冒険家にも妄執から解放されるくらいの救済があっても良かったはずだ。それだけが残念だった。