アニメバブルと勘違い

再び長文注意。例によって読まぬが吉。

「アニメは世界に誇る日本の文化です」

こんなキャッチコピーを目に、あるいは耳にしたことがあるだろうか。まぁ、あまり無いかもしれないが、ある、という人は、この言葉に騙されてはいけない。こんなものは嘘である。誇大広告であり、資本主義の罠である。


何が「世界に誇る」か。笑わせる。仮に「もののけ姫」が国際映画賞を受賞したところで、それがアニメの全てではないではないか。むしろアニメの中心は、1話30分の連続テレビアニメのはずである。それを抜きにして「アニメ」を「文化」として評価するなど、ちゃんちゃらおかしい。そして、それら全てのアニメを考えたとき、本当に「世界に誇る」文化と言えるのかは、かなり怪しいものである。
たとえば、アメリカでは「otaku」「anime」など、様々な日本語が英語化している。日本アニメの人気は世界中で高く、日本のアニメ技法における「お約束」も浸透しているという。が、しかしである。それはあくまで「海外のオタクに受け入れられている」あるいはもう少しポジティヴに捉えたとしても「海外にオタクを増やしている」というだけであって、何ら誇るべきことでもない。むしろ、ヨーロッパの政府などは、日本のアニメを有害視すらしているという。考えてみれば当然である。たとえば、コスプレは日本国内ですら身内のみの閉鎖空間*1でのみ楽しまれるというのに、ほとんど免疫の無い海外で、突然青少年達がアニメの格好を真似る行動を取るようになったら、異様と言う他無い。「アニメは幼児の見るもの」という観念の強い海外で、子供達の精神を蝕む害悪とみなされても仕方のないことだ。
他にも、ペドフィルに対する強烈な嫌悪感を社会的に共有している欧米で、フィギュアなどを含めた日本のオタク文化(「オタクの文化」であって「オタクという文化」ではない)は、ほとんど犯罪的とも言えよう。


そして、百歩譲って世界が日本のアニメそのものを認めていたとしても、当の日本人は本当に「誇って」いるのか。そもそも、「誇って」いるはずの日本人の内、一体どれだけの人間がその誇るべき文化とやらに脳容量を割いているのか。全く持って疑問である。
本当に誇っているというのであれば、外人に対してちゃんとアニメの良さをアピールできるのか。海外の姉妹校との交流会でプレゼント交換をするとき、折り紙や浴衣と一緒にアニメDVDを渡せるのか。もし海外を旅行しているときに、その土地の人から「日本のアニメは素晴らしいよね!ちょっと日本のアニメの話を聞かせてよ!」と言われたら、どれだけの日本人がどれだけのことを語れるというのか。「今の日本でのトレンドは何?何てアニメ?」と聞かれて、どれだけの日本人が具体的タイトルを挙げられるというのだろうか。


騙されてはいけない。「アニメは世界に誇る日本の文化です」などというのは、所詮金儲けのために生み出された煽り文句でしかない。本当に誇っているのは、真剣にアニメを愛するオタク達と、薄給でもいいものを作り続けるクリエイター達だけである。「日本」などとはとても呼べないごく小さな範囲の人達だけなのである。
実際のところは、「アニメは世界(のオタク)に誇る日本(のオタク)の文化です(だからもっと金を使え)」というメッセージに過ぎない。自分で誇ってもいないのに、「そうか、アニメは日本が世界に誇る文化なのか」などと安易に信じてしまうなど、愚の骨頂と言えよう。

*1:アキバは大きな観念的閉鎖空間と言える