『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』

前宣伝とは全然違って、淡々と政治劇を描くだけの作品だった。
破天荒と言いながらハチャメチャでは全くないし、特にギャグがあるわけでもない。「チャーリー・ウィルソンはいかにしてアフガンに金と武器を流し込んだか?」をただひたすら描写していくだけで、かなり退屈。あまり人に勧めようとは思えない作品。
[以下ネタバレ含む]


チャーリー・ウィルソン議員は、最初からアフガンの情勢に興味津々で、登場してから人物描写もそこそこにアフガンへの提供資金である機密予算を倍額にする。
その後、パキスタンとアフガンから「もっと金と武器をよこせ」という要請を受け、そのための会合の帰りにアフガン難民キャンプへ立ち寄る。そこでチャーリーは玩具爆弾で手足を失った子供や、切々とソ連軍の残虐さを語る人々に接し、ものすごく同情する。チャーリーがそんな風に感情的な人だという描写はその時点までには全く無いし、キャンプでの衝撃も観客にはうまく伝わらない。この時点で、かなり置いてけぼりな印象を受けてしまった。
しかしともかく、チャーリーはアフガンに援助し、ソ連軍を叩き潰すことを誓う。そのためにほされたCIA局員と組み、方々に手を回す。イスラエルやエジプト、サウジなどとの本来あり得ない秘密同盟を実現させたり、恩を売った政治家に働きかけて予算を得る。予算は1000万ドルから4000万ドル、1億ドルと増えていき、最終的には10億ドルを超える。
こうした政治工作自体はすごいのかもしれないが、単なる議員のはずのチャーリーに何故そんな影響力があるのか?ということの説明は、「6回の任期中最大の成果は5連続の再選。ほとんどの政治家に恩を売っている」という一言があるのみ。アフガン援助への情熱と同じく、説得力がまるで感じられない。
こうした政治劇が続いていって、「どこで山場があるのかな?」と思っていたらいつの間にか終わっていた。ドラマと呼べるドラマは何も無い。酷く退屈なまま終わってしまった。


ハリウッド映画は予告編で全てを語ると言われているが、この映画に関しては、予告編に騙られた感じがする。