『奇跡のシンフォニー』

久しぶりに、邦題が直訳・カタカナ化じゃない映画を観た気がする。
原題は『August Rush』で、主人公の音楽家としての名前そのまま。『オーガスト・ラッシュ』でも十分な気がするが、「オーガスト」も「ラッシュ」もカタカナ語としてのイメージが先行しそうだから敢えて改題したのかな。邦題は内容を反映しつつ、商業的な狙いもうまく付いた良いタイトルだと思う。
物語は、11歳の少年エヴァンが両親を捜すために施設を抜け出し、音楽の才能を開花させていくというもの。両親は一夜を共にしただけで離れ離れになっていて、父親は子供の存在を知らないし、母親は生まれてすぐ死んだと聞かされていた。一夜だけの関係のはずなのに二人は互いを11年間も想い続けている。前半は両親のラブロマンスにもなっているが、「どんだけピュアなんだ」というくらいの純愛で、11年が数ヶ月のように感じられる。
エヴァンと両親はそれぞれの音楽を通して、お互いに近づいていく。まさに「奇跡」的な巡り合わせで、エヴァンの超天才的音楽センス(音階を教えただけで全ての音符記号を使いこなし、どんな楽器でも触っただけで弾きこなす)と併せて、一歩間違えば単なる御都合主義。というか、実際御都合主義の嵐なのだが、そうなってでもとにかく「音楽が人を結びつける奇跡」を描きたかったように感じられる。


一言で言うと、「ハウス名作劇場」を彷彿とさせる映画。親を求める子供と、子を求める親(父親は子を追ってるわけではないが)。苦労を乗り越え、音楽の才能を通して奇跡的に再会する3人。30分×52話あれば御都合主義もうまく解消できただろうにと思ってしまった。
ラストの引きがうまく出来ていて、ダラダラせずに盛り上がりが最高潮のところでスッと引いている。物語の構成が真っ直ぐではっきり先が見えているので、ここで終わらせずに進めてしまうと、恐らく完全な蛇足になっていただろうと思う。終わるべきところでスパッと終わっている。
御都合主義が許せない人には辛いだろうが、単純に感動しときたいという人には良い映画。